難しすぎる道案内

二月に千葉県で実施された県立高入試で、「国語」に受験生の約半数がまったく得点できないという異例の設問があったことが二十日分かった。
Yahoo!ニュース - 社会 - 産経新聞

問題の実物を見てないのですが、記事から推測するに、

難しいところ1
道案内をしてあげるおじいさんの様子を選択させる

「急いでいるようだ」
「体力がなさそう」
「とても元気そう」
「時間の余裕がありそう」

この4つの状態からおじいさんの様子を選択するのだが、選択させる意図が分からない。「どれでも構わない」ではなおさらである。道徳のテストかこれは。試験問題ならどれか1つを指定すればいいだけなのではなかろうか。

難しいところ2
ルートの選択をさせる

「急な上り坂のあるAの道」
「平らなBの道」(おそらく遠回り)

上で自分の選択したおじいさんの状態によって、適切なルートを選択しなければならないのだろうか。たとえば、時間に余裕がありそうなおじいさんなら、遠回りで散歩でもしていけということなのだろうか。

深く考えていない設問者を推定するに、正解のルートは下記。

「急いでいるようだ」A
「体力がなさそう」B
「とても元気そう」A
「時間の余裕がありそう」B

難しいところ3
「あなたが、そのおじいさんにどのような配慮をしているのかがわかるように」

非常に曖昧で難しい設問とさせてしまっているのが最後のコレだ。本当に国語の問題か?
だとしたら、国語は適切な場面設定能力と、ルートの選定能力、おじいさんへのいたわりという能力を必要とする科目だということか。

深く考えていない設問者を推定するに、先ほど選択したルートに配慮は下記。

「急いでいるようだ」A 最短コースを案内する
「体力がなさそう」B 急坂を避ける
「とても元気そう」A わざわざ遠回りする必要はなさそう
「時間の余裕がありそう」B のんびりサイクリングを楽しめるように

後ろの2つの理由が苦しいのが分かると思う。
このときに、試験対策として「自分が解答のしやすい都合のいい設定を選ぶ」スキルが必要とされている。
採点方針としては、ルート選択は影響しないらしいが、おじいさんへの配慮に矛盾がある、

「急いでいるようだ」B 急がば回れか!?
「体力がなさそう」A 約2倍の距離より急坂を押して上った方がマシなのか!?
「とても元気そう」B 少しサイクリングをしたらどうですかってことか!?
「時間の余裕がありそう」A 早く着いてしまってどうする!?

の組み合わせは選ばない方が良いだろう。
(回答の文章の意味が通らなくなる)

設問自体は悪い設問ではないと思う。
ただ、高校入試、しかも、県立ということは、複数の高校で共通なわけで、こういうアバンギャルドな設問は避けておくべきだと思う。

今の高校入試がばかげているから、それを改革したい、という意味で、高い精神性を試す設問をしてみたくなったのかもしれないが、試験本番でぶっつけでそんなことをする前に、もっとするべきことがあるはずだ。


何よりも得点が0だった受験生たちに声を大にして言いたい。


みんな0点なんだから気にするな!


たにぐち放浪記 - 明るい台風さん / 台風さん一過 - 「千葉の県立高入試で“難問” 受験生の半数0点 道案内の作文、選択肢に混乱」Yahoo!ニュース - 社会 - 産経新聞 , 「PCなしで..


とはいえ、この設問で苦しむ受験生もかわいそうだ。

設問の読解力もあるが、ギリギリの戦いを強いられている場合、自分の判断で問題を解くのではなく、出題者が意図した「正解」を見つけ出す、というゲームの世界に埋没しているのではないだろうか。自分の判断による回答では、競争者にたいして、わずかなビハインドになり、それは、オリンピックの競技のタイムにおける100分の1秒に等しい隔絶が存在するのではないだろうか。

そういう上で、採点者が一人ということもないだろうから、採点基準も簡潔なもので済まないだろうと推測して、この県立入試問題の「規格」に逸脱した設問であると考えられる。

ぜひ、設問の全文と採点基準、正解例を全ての設定分公開して欲しいものです。

設問者の配慮も足りないですよ。(一人で採点するなら何でもアリとは思いますけど)

とか書いてたら、東京新聞で問題正答が公開されています。

ひどいモンです。

指定した内容・条件にしたがっているか、また、(1)で選択したことと(2)で説明していることとのつじつまが合っていて、適切に表現されているかなど、採点基準の細部については各学校で定める。(15点)

つまり、採点官の個別の判断に任せる、ということで、15点もの配点を、しかも、泣き出してしまうような生徒にとってはヘタすると、小学校高学年あたりからの人生の自由時間という高い代償を払って望んでいる入学試験のうちのかなりの割合をそんないい加減な方法に任せてしまうわけですね。

「どれを選んでもいいんだよ、自分の気持ちにあうものを一つ選んで、おじいさんを道案内する文章を<無難に>作ってね」
aranxp: 難問なのか?

たとえば、この一文を加えても「無難」というキーワードに対する正解を探る戦いの終止符とはなりえない。出題者の意図=無難なのであって、採点される以上、「自由」は存在しないのである。


要はですね、0点の生徒は「自分はこんなにおじいさんを労わってますよ~、いい人ですよ~」っていう偽善行為に走ったからダメなんです。

CuBLOG: 受験生は道案内が苦手

ああ、キツイ(笑)。
キツイですが、なんか生徒の気持ちと現実を上手く言い当てているような気がします。

そして大事なことだと思うんですが、やはりこんな問題でも幾ばくかのポイントを上げられる生徒の方が、問題解決能力は高いと思いますよ。社会に出れば、正解のないことばかりなんですから。

2004.5.23 追記

彼らはどんな爺さんを想定するかで評価が変わるとかなんとか、へんに構えてしまったんでしょうか。
心優しき(?)受験生たち

まさしく、そんな気がしますね。たとえば、15点の配点があったとして、「とても元気そう」なおじいさんや「時間の余裕がありそう」なおじいさんは、どう回答しても、「急いでいるよう」なおいじいさんや「体力がなさそう」なおじいさんに比べて、配点が下がると考えることもできるのではないでしょうか。あらかじめ簡単そうな設定にすると、15点満点だった問題が、その時点で、最高でも10点とか、減点されてしまうような気がします。


しかし、Bulkfeedsで出現する他の方のエントリ見ると、やはり、ウェブログなどというものを運営されている方は、泣き出す受験生に非好意的ですな。いやはや、意見のしっかりしている人たちだなあ、とつくづく思います。

そうやって眺めている間に、なんとその問題が掲載されているサイトを発見された方が。

その問題
Ikaga?::MT: 県立高入試で“難問” 受験生の半数0点

スゴイですね。
わたしもチラッと探しましたが、見つかりませんでした。

ややこしいけど、そんなに難しくないだろ。

このややこしい、で 15/100 も点数持って行かれたんじゃ、神経質にもなりますよね。

これには、入試に偏重しすぎた日本の教育のあり方にも問題はあるとは思います。
そろそろ、入試やめればいいのに。

でも、こういう教育制度にしている人たち自身がそろそろこういう教育制度で育って来つつあるような気がして、そうすると、自分のアイデンティティーにも関わるので、より変えられないんだろうなあ、と思ってしまったり。

2011.11.21追記
東京新聞が問題を掲載しなくなってしまったので、問題が見られなくなってしまっていますので、探してみたところ、

福丸の政治家への道:千葉県高校入試問題難問に半数が0点

に地図の画像付きで発見しました。
いちおうコピっときます。


 次の説明を読み、あとの問いに答えなさい。

 ある晴れた日に、あなたが散歩に出かけたとします。
 ちょうど略図の◎の地点を通りかかったとき、自転車に乗ったおじいさんから、略図の中の「公民館」までの道を尋ねられました。
 おじいさんは、近隣地区から、孫のピアノの発表会の会場へ向かうところだということです。
 略図Aの道は距離は短いですが、途中に急な上り坂があります。
 一方、略図Bの道は平らで走りやすいですが、目的地まではAの道の約二倍の距離があります。

問い
あなたはこのおじいさんに、AまたはBの道順をどのように説明しますか。次の(1)、(2)について、指示にしたがって答えなさい。

(1)A・Bどちらかの道を選ぶにあたって、まずおじいさんがどのような様子なのか、あなたが次のア~エのうちから一つ仮定して、その符号を書きなさい。
ア 急いでいるようだ。
イ 体力がなさそうだ。
ウ とても元気そうだ。
エ 発表会までは時間の余裕がありそうだ。

(2)A・Bどちらかの道を選び、その道順についての説明を、次の注意事項にしたがって書きなさい。
 なお、どちらの道を選んでも、そのこと自体は採点に影響しません。

(注意事項)
① (1)でおじいさんの様子について仮定しましたが、あなたが、そのおじいさんにどのような配慮をしているのかがわかるように書くこと。
② 字数は、百五十字以上、二百字以内(句読点やかぎかっこも字数に数える。)とすること。


ところで、この問題について言及している記事はたくさんありますが、具体的な解答にチャレンジしているところが少ないことも特筆かと思います。

今から、教える道は、遠回りですが、平らで走りやすい道です。まず、薬局がある交差点まで行き、右折します。その後しばらくまっすぐ進んでいきます。しばらくすると、信号を二つ通りすぎます。すると、書店があるT字路に出ます。そこを右折します。右側にある花屋をすぎ、八百屋の角を左折します。すぐ右折したら、左側に公民館があります。(159字=原文のまま)
●笑う作文講座●公立高校入試の解答編①\(⌒O⌒)/: ぶんぶんの落とし穴

とりあえずきりしまもやってみました。ア-Aというヌルい選択肢で行きます。

(1) ア
(2) (ルートはAを選択)
急いでいるとお見受けしましたので、途中急な坂があるのですが、お孫さんのピアノの発表会に遅れないように、早く着ける短いルートをご案内します。この先、パン屋さんのところで右に曲がります。米屋さんまで道なりに進み、米屋さんのところで左に曲がります。ここから急な上り坂を上り、花屋さんで右に曲がります。八百屋さんで左に曲がると公民館に着きます。(168文字)

書こうと思うと意外とルートが長くて面倒なのに驚きました。
だいたいラストの八百屋なんてなくてもいいのではないかと。
道案内のポイントは、
「目印までの道中については余計な情報はつけない」
「三叉路状になっているところも明確に右・左と区別する」
としてみました。

これで採点官が何点くれるかなんて知ったこっちゃないですけどね。

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Yahooのニュースから:千葉県で実施された県立高入試の国語の問題。『地図を見ながら、公民館までおじいさんを道案内する作文を書く、という出題に正答率はわずか14%、46%は0点だった』そうで。 設問は散歩の途中、おじいさんに出会ったとの想定で、公民館までの... [詳しくはこちら]

コメント (3)

しまづ:

全然難しい問題とも思えないがなあ。ま、一番悪いのは、四つの選択肢を例として挙げるだけにすればよかったのに、必ず選択するようにさせたことだね。創造性を狭めてしまっている。おれなら、絶対例とは別な状況を想定して書きたいと思うし。ま、ひとつ言えるのは、それが苦手な人は別な問題に時間を使い、余った時間にこういう問題を充て、完璧ではなくともとりあえず時間内に適当な例文を書いておくくらいのことは受験生として当然やっておきたいところではある。

はじめまして。しみっちと申します。
TBありがとうございました。(ウレシハズカシ…)
東京新聞のリンク見ました!とくに採点基準。ヒドイと思います。世の中答えが一つとは限らない!のはもっともですが、こと入試に際して、答えはともかく基準が一つとは限らない、なんてのは受験生がかわいそうですよね。

まあ、県立高校の入試なんで、これに失敗すれば、いままでの中学3年間は ムダ だったということですからね。
受験勉強もそろそろみんな投げて、自然体で行ける学校に行くことにいれば、試験中に泣かなくても済むでしょうし(笑)。

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2004年05月21日 16:28に投稿されたエントリーのページです。

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