貝印「関孫六」シリーズ

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「研ぎ」がマイブームとなり、いくつかの包丁を手に取って研いでみると、明らかに材質によって切れ味の限界の違いを感じます。もともと全然切れなかったのが驚くほど切れるようになるものや、いくら研いでもそこそこの切れ味にしかならないもの。そんなことから、自分が研いだ包丁の切れ味がどのくらいなのか、比較対象となる入手しやすい新品の包丁を探してみました。

ホームセンターやアマゾンなどで安定供給されている包丁と言えば、貝印「関孫六」シリーズ。近所のロイヤルホームセンターにも結構大きな売り場面積をもっていますし、Amazonでも揃っています。(近所のスーパーでGLOBALの取り扱いもありますね、取り寄せみたいですが)

しかし、やたらいろんなシリーズがあってどれがいいのかわかりにくいので公式オンラインストアの商品を調べてみました。貝印公式ページとかでシリーズのコンセプトとかきちんと整理してくれるといいんですけどね。

2015年3月4日追記
「旬」シリーズのプロモーションの一環で、スペシャルコンテンツが用意されたようです。

貝印公式ページ 関孫六(包丁)

スペシャルコンテンツ 貝印、包丁のすべて→製品情報→関孫六シリーズ一覧

とはいえ、どのシリーズを選ぶべきか、という点ではちょっともやっと感が。

なお、シリーズのバリエーションがあまりない形状の包丁や、冷凍包丁やパン切り包丁などの特定用途のものは除きます。2000STばっかりですけどね。

まとめとしては、

洋包丁か和包丁か、刃の構造でSTシリーズかCLシリーズか、あとは柄の仕様が高級になっていくと数字が増えていく

という傾向なようです。シリーズこそ多いものの、純粋に切れ味だけで言えばあまり差がなさそうに見えます。また、材質・構造的な視点でラインナップを並べると並ばないはみ出たモデルなどもあります。

以下つづきで。


洋包丁

各シリーズにわりと普遍的に存在する、三徳165mm、牛刀180mm、ペティナイフ120mmを中心に調べました。

というか、この3本があれば家庭料理ではすでに十分贅沢かも知れません。腕力のある男性や、大きな食材を扱ったり、調理スペースが大きい場合は、牛刀は長めの210mmでもいいかもしれません。牛刀は本職用になると300mmとかまで伸びていきますからお好きなサイズを。関孫六は4000STシリーズが牛刀のサイズのラインナップは充実していて、最大270mmまであります。

表の黄色いシリーズは調べた中で特に形のバリエーションが多いと思われたものです。各種を同シリーズで揃えたいときなどの参考になるかと。

 

STシリーズ(1枚材)

刀身が1枚の板でできているシリーズ。基本的にはステンレス製で、錆びないことが重視されていると思われるライン。STはステンレス、かな。

  刃の材質 口金 本通し
2000ST モリブデンバナジウムステンレス刃物鋼 ナイロン、ポリプロピレン(竹粉含有) リング
3000ST 積層強化木 合わせ
4000ST 合わせ
5000ST 一体
6000ST ハイカーボンステンレス刃物鋼(鍛造)  
匠創 ハイカーボンステンレス刃物鋼(食洗機対応) オールステンレス仕上げ
10000ST
15000ST ハイカーボンステンレス刃物鋼(刃側と背側でろう付け、刃紋) 積層強化木の逆三角、尻金付 一体
碧寿 ハイカーボン鋼 積層強化木 なし 背通し

匠創と10000STはどちらもオールステンレスの包丁で上の表だと区別がないけど、10000STの方が倍ぐらいの価格でGLOBALの包丁に似た感じ。

碧寿はラインナップ的には仲間はずれなのですが、単一の金属であることからこちらに入れました。価格帯、柄の仕様的には2000STと3000STの中間くらいですが、刃が全鋼で、錆びる包丁です。

CLシリーズ(複合材)

刃物鋼をステンレスで挟んだシリーズ。CLはクラッド鋼からかな。表面部分はステンレスですが、刃先の鋼が出ているわずかな部分は錆びるので、使用後はきちんと水気を拭き取って湿気のないところに保管する必要があります。仕組みとしては本割り込みと同様と考えられるので、STシリーズよりは切れ味を重視していると考えられます。5000CLより上のグレードになると挟まっているのもステンレス鋼になっています。

刃になる部分を硬い金属、それを柔らかい金属でサンドする構造により、切れ味、錆びにくさ、研ぎ易さを両立させようとしていると思われます。

全部硬い金属だと研ぎにくくなります。

  刃(切り刃)の材質 口金 本通し
2000CL 特殊炭素鋼 ナイロン、ポリプロピレン(竹粉含有)  
3000CL ナイロン、POM樹脂 合わせ
3500CL 積層強化木
4000CL
5000CL モリブデンバナジウムステンレス鋼(KAI-GOLD) 一体
10000CL ハイカーボンステンレス刃物鋼(刃側と背側でろう付け、刃紋) 白合板  
ダマスカス ハイカーボンステンレス刃物鋼(V金10号、ダマスカス模様) 積層強化木の逆三角、尻金付
萌黄 ステンレス(食洗機対応) ナイロン、ポリプロピレン なし
リング

割と新しくラインナップされたっぽい萌黄と茜は刃の材質に大してこだわりがないようで、もっぱら食洗機対応が強く謳われています。オールステンレスの匠創や10000STよりは安い食洗機対応ライン、としての位置づけでしょうか? 価格的にはそれぞれ3000CL、4000CLと同等なのですが、柄にそこまでのグレード感がありません…。そして、2000STとの価格差がよくわかりません。間に挟まれているステンレス鋼で相当切れ味違うのかな?

ダマスカスはダマスカス模様の好みが分かれるでしょうか。その他の仕様面で類似する15000STと、刃の紋の好みで選択するモデルなのかも知れません。

というわけで、調べてみた結果からシリーズから刃の材質を重視して、コストパフォーマンス優先でおすすめをセレクトするなら、

   

切れ味重視で、お手入れはする、ということで全鋼の碧寿で三徳、牛刀、ペティナイフの3種類揃えるのはどうでしょう。

錆びる、錆びる、とよく書かれていますが、料理人のようにふきんを用意しておいて、使う度に拭いて水気をとり、しまうときはぬるま湯で流して(水気が蒸発しやすいのだそうです)拭き上げてから、タオルを敷いた引き出しにしまえば十分ではないかと思います。

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ペティナイフを購入してみましたが、銘の部分が刻印になっていて高級感があります。(Amazonの画像では印刷っぽいので購入時期とかにもよるのかも知れませんが)

鋼なのでステンレスにはない切れ味をもっていると思いますが、手仕上げではないので、購入したらまず研がないと真価を発揮しないかも知れません。

   

切れ味よりも、お手入れしないことを最優先とされる方は刃がステンレスで錆びず、柄も樹脂製の2000STでしょうか。食洗機にも突っ込めるようですし。スペックから見る分には5000シリーズの鍛造まで刃については差がわかりません。ステンレスはあまり硬さを感じないので、それなりの頻度で研いであげる必要があるかと思います。

新しくラインナップに加わった、食洗機対応を前面に打ち出している感じの「萌黄」「茜」でもいいかもしれません。バリエーションはあまりありませんが、三徳・牛刀・ペティナイフの3種類は揃います。

2000CLシリーズもコストパフォーマンスはいいと思いますが、上記2シリーズの中間、みたいな立ち位置だと思います。刃先の部分は鋼なので、放置すると錆びると思われます。まあ、決めきれない人には中庸なモデルは重要ですね。

とりあえずまとめて何本か同じグレードで購入する、というスタイルでセレクトしています。これは三徳包丁や、牛刀、菜切のいずれか1本の包丁だけでなんでも調理できなくはないのでしょうが、研ぐことを考えると、必要とされる用途に合わせて適材適所にしたほうが購入時の状態を長く維持できるのではないかと思うからです。 小さなものを切るのに刃渡りの長い包丁を使っていると、手前だけ減ってしまったりして、だんだん形状が崩れていってしまうと思います。そのため、この3種をまとめて購入して、用途に応じて使い分けると、それぞれを良いコンディションで長く使い続けられるのではないかと思います。三徳包丁と牛刀は似た者同士なのですが、肉などを引き切りするには少し長めの牛刀、野菜などを押し切りするには短めの三徳包丁、という分担です。刃の部分のアールが牛刀の方がやや強いので、押し切りにはフラットに近い三徳包丁の方が向くと思います。牛刀独特のとがった先も、肉類を切り分けるのに便利です。安いグレードなので、とりあえずひと揃い買ってみて、使いやすい物を使えばいいかと思います。

もちろん、気に入ったデザインのものがあったり、プレゼント用や、お金に糸目をつけない、というのであれば他の選択肢でも全然構わないと思います。価格に応じてモノは良くなっていきますし、特に、口金一体本通し仕様の5000ST、5000CLあたりは重量バランスも良くなりますし、高級感の漂うルックスなので満足度は高いかも知れません。それ以上のグレードは特に外見のお好みが大きいかと。

和包丁

出刃105mm、150mm、165mm、刺身210mmあたりを中心に調べました。和包丁で構成する場合は、家庭料理では、菜切の東西いずれかと、使いやすいサイズの出刃が1本位あれば十分かもしれません。刺身はちょっと贅沢かもしれませんが、お刺身をサクで買ってきて、自分で切るような場合があるなら1本あってもいいと思います。

  刃(切り刃)の材質 口金  
銀寿 本鋼 あわせ材(切刃/炭素鋼、側金/軟鉄) 天然木(朴) ナイロン  
金寿 本鋼 水牛角  
碧寿 ST モリブデンバナジウム刃物鋼 ナイロン  
金寿 ST 積層強化材 ナイロン 糸切り刃
ステンレス コンポジット(刃側/ハイカーボンステンレス刃物鋼、背側/ステンレス) 積層強化木 ナイロン  

和包丁の場合はシリーズが割と少なく、刃の種類で3種類、本鋼は口金の材質、STは柄に違いがあるだけです。全体を見渡すと、金寿 STにのみ糸切り刃仕上げがあるようです。「ステンレス製和包丁では難しい」と書かれているので、研ぎ直して維持できるのか疑問。また、刃の材質としては、鋭い切れ味と研ぎ直しに優れた「ハイカーボン特殊ステンレス鋼」鋼に近い硬さを持つステンレス材料「モリブデンバナジウム鋼」と表記されているように、STシリーズはステンレスの特性を持ち錆びにくい代わりに、切れ味では本鋼シリーズに譲りそうです。

 

ということで、切れ味重視であわせ材の銀寿 本鋼で150mmの出刃と、210mmの刺身(柳刃)なんかどうでしょう。210mmだと、牛刀と同じくらいになってしまいますので、収納場所に困らなければ刺身は240mmでもいいかもしれません。(全長337mm→375mm)長い刃物だと恐怖感がある、とか、小柄な女性でストロークがない場合は180mmという選択肢もあるのかも知れません。

 

菜切は東西あるのですが、レビューにもあるとおり、Amazonの画像は逆っぽいです(商品のリンクは左が西型、右が東型←Amazonさんに申し入れて直してもらいました)。手元のところの角がとんがっているのがAK5025西型、丸くなっているのがAK5026東型です。

 

または、「鎌型薄刃包丁」「薄刃包丁」なんかも雰囲気があっていいのではないでしょうか?

和包丁でお手入れしたくない、という場合は、碧寿STで構成することになるかと思いますので、

  

こんな感じでしょうか。菜切りは碧寿 STがないんで2000STをセレクトしています。
(そういう意味でも和包丁は鋼の方がメインストリームなんでしょうね)


Amazonで調達できる他のメーカー


洋包丁で、


5000ST、5000CLシリーズあたりを検討するなら、
藤次郎作DPコバルト合金堺菊守 スタンダード 口金付


10000ST、10000CL、ダマスカスシリーズあたりを検討するなら、
藤次郎作粉末ハイス鋼割込GLOBALミソノモリブデン鋼杉本 全鋼


などの商品が同価格帯に出現してくることになるかと思います。


ですが、Amazonでの購入の場合、手にとって見比べられるわけではないですから、どの辺を購入ポイントにするか迷うところです。レビューを見ても、それぞれ買って比較するような酔狂はごくわずかです。しかも、素人が包丁屋さんにフラリといっても、ずらりと並ぶ包丁から何かをセレクトするのは困難です。(お店の人に見立ててもらおうとしても、お店の人の質問がほとんどチンプンカンプンで、「初めてなら…」みたいなおすすめ品を選んでもらうのが関の山のような気がします)


その点、関孫六シリーズならわかり易いかと思いましたが、切れ味に関する部分のバリエーションは少なく、どちらかというと柄の部分の違い、という結果になりました。上記の表を見るとそれでもバリエーションがあるように見えますが、家庭用に購入する場合の予算という要素を加味すると、高価格な上級ラインがスッパリ消えるかも、と思わなくもないです。(じっさい、その辺のグレードはプレゼントにされていることも多いようです)
他の商品が並ぶあたりのグレードになってくると、好みなどで選ぶしかないのではないでしょうか。

だからこそ、大量生産による手ごろな価格で各種形状の複数の包丁を、Amazonなどの通販や、近所のホームセンターなどで揃えることができるのが、関孫六シリーズの最大の長所なのではないかと思います。
関孫六の廉価なシリーズで複数買いそろえてみて、好みの形状や大きさが決まったら、もっと高級なものに買い換えてもあまり懐が痛くないし、高価なものの高価な価値が分かるのではないかと思います。

それ以外


ふだんは牛刀1本のきりしまとしては、牛刀は


五香刃物製作所の関東牛刀光月


なども気になります。直販はなさそうですが、ネットでは厳選 刃物 道具の専門店 ほんまもんで購入できそうです。


和包丁はAmazonでの選択肢はあまりないのですが、Amazonにこだわらなければ、


築地 正本(まさもと)


堺一文字光秀


築地 有次(ありつぐ)


 京都 有次は日本橋高島屋で購入できるらしいです。


なんかを調べればポチってしまうか、正気にかえってAmazonに戻ってきてポチってしまえることでしょう。


霞とか本焼きとか白二とか青二とか気になるようになったら、この記事程度では太刀打ちできないので触れないでおきます。和包丁は洋包丁よりも 素材×鍛冶×刃付×運用 の要素が大きくなって単純比較ができにくい気がします。


包丁の価格はどのぐらいの金額が適正なのかというのは、用途やお手入れのできるレベルによるでしょう。きちんとお手入れできないのに、あまり高級な包丁を手にしてしまったら、それこそ宝の持ち腐れです。本焼きの包丁を一本作り上げる労力を考えたとき、それを受け取った自分が手入れして維持し続けられるのかどうかを考えるといいでしょう。


どちらにしろ、本職の料理人ではない以上、ちびるほど使い込むこともないと思いますので、どんなものを買っても一生ものとなってしまうと思いますので、気の済むものを購入するのがいいと思います。


一生ものとなると、最初から間違いのない1本を選びたい気もしますが、メンテナンスする自分の研ぎのウデなども相応に上達する必要がありますし、無理解の家人によって刃こぼれしたりするとあまりの高級品は目も当てられないことになりかねません。
キッチンには、関孫六の安価なグレードを置いておいて、とっておきの包丁はつねにどこかに隠しておくような運用が求められる家庭も少なくはないかも知れません。
そういう時も、関孫六の安価なグレードでひと揃いあれば、自分の上達に合わせて高級な包丁を買った時も、身代わりの役目を立派に果たしてくれると思います。

関連:貝印 関孫六を比較する関孫六 碧寿 を研ぐ

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コメント (4)

花太郎:

こんにちは

今5000CLのペティを使っていますが
2700円位の購入価格の割りに
すごい切れ味で満足しています。

今180mmの牛刀を悩んでいるので
表は凄く分かり易く助かります。

今日サポセンに聞いた点ですが
5000CLと4000STは同じ
モリブデンパナジウムステンレス鋼でも
KAI GOLDと8A材と呼称に違いが有る様に
配合している合金は同じでも
率に違いが有るとの事。

4000STは貝印HPではハイカーボン特殊ステンレス鋼
アマゾン表記との違いは物は同一ですが
より分かり易くモリブデンパナジウムステンレス鋼となっているのではとの事。

4000CLの特殊炭素鋼はSKなのか白紙なのかは教えてくれず、良い鋼を使っています。又鋼は峰まで入っている本割込との事でした。

Kirishima [TypeKey Profile Page]:

コメントありがとうございます。

私も5000CLのペティナイフと180mmの牛刀を持っていますが、
なかなか良い品だと思っています。

特にKAI-GOLDが合わせてある刃先の紋が美しいと思います。

柄の仕様も積層強化木、一体口金、本通しと立派なので、
すでに5000CLのペティナイフをお持ちなら、是非5000CLをおすすめします。

シリーズが揃っている美しさも出てきますし。

刃先まで錆びにくいのは気軽ですしね。

ひげ:

はじめましてこんにちは。

古い記事に失礼いたします。

4000STの三徳を自分用に買い、
なかなかいいぞと思ったので
実家の母親に2000STの三徳を
プレゼントしました。

2000STは4000STと比べて軽量で
薄い作りになっているようです。
刃もちもちょっと落ちるように思いますが
自分で使い比べているわけではないので
正確にはなんともいえません。。

関孫六シリーズは入手性もいいですし
価格と品物のバランスもなかなかで
いくつか揃えて気に入って使っています。

Kirishima [TypeKey Profile Page]:

コメントありがとうございます。

4000STは分かりませんが、
2000STはかなり柔らかいので、毎日の家事用ですと、頻繁に研ぎながら使う必要があります。

いろいろ比べてお気に召したグレードで揃えるのがいいかと思います。
プレゼント用は5000以上あたりがお勧めかと思います。

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2014年06月28日 14:03に投稿されたエントリーのページです。

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